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2026/05/11 18:00

<ライブレポート>初の全国ツアーを完走 トゲナシトゲアリが示したライブバンドの矜持

 2月から3月にかけて全6会場7公演で開催された、トゲナシトゲアリ初の全国ツアーの追加公演【トゲナシトゲアリ TOUR 2026 FINAL “拍動の未来 -ENCORE-”】が、5月1日に東京ガーデンシアターで開催された。日替わり曲として演奏されていた楽曲を網羅し、ツアーの集大成となった一夜。ツアーを完走し自信を付けた、この日の3人はひと味違っていた。

 会場に鳴り響く「鳩のアレ」(TVアニメ『ガールズバンドクライ』オリジナルサウンドトラック収録曲)と待ちきれない観客の手拍子に促され、現れたメンバーはステージの真ん中で拳を合わせて気合い入れ、まずは「雑踏、僕らの街」を挨拶代わりに繰り出した。理名(井芹仁菜役)の叫びのようなボーカルに続き、熱く太いバンドサウンドが会場を圧倒すると、観客は一斉に拳を掲げながら掛け声を合わせ、サビへと向かうスリリングな展開でクラップを響かせた。TVアニメ『ガールズバンドクライ』オープニング主題歌として知られる同曲は、ライブのオープニングナンバーとして鉄板だ。トゲトゲのライブは、いつもこの割れんばかりの歓声と一体感で始まる。

 間髪入れず、イントロのギターリフが印象的で疾走感あふれる「ダレモ」へとつなぎ、3曲目には「このツアーでの初披露曲」と紹介して、「蜃気楼ニ問フ」を演奏した。ベースの朱李(ルパ役)がギターの夕莉(河原木桃香役)と向かい合って演奏するシーンを経て、オチサビでは理名がアカペラでシャウト交じりに歌声を響かせるという、エモーショナルな展開に胸がアツくなった。

 朱李の「では夕莉さん、(ツアーから帰って来た)“ただいま”の気持ちを込めて、アレをやっちゃいますか!」と呼びかけて始まった「空の箱」。トゲトゲのライブはアニメと連動した演出も人気で、その代表的な一つが同曲だ。ビジョンに映し出された雨の神奈川・川崎駅前をバックに、夕莉がギターをつま弾き歌い始めると会場は見守るように静まり、そこに重なる理名のボーカルと叫び。アニメの仁菜と桃香の路上ライブシーンを再現した2人のセッションに、会場が大歓声で沸いた。それに続けてT Vアニメ放送前から人気の「理想的パラドクスとは」を繰り出す。疾走感あふれるサウンドに乗せて、息苦しさや葛藤、それに抗う姿を歌った同曲。両手でマイクをつかんで必死に声を飛ばす理名と、黙々と楽器に向き合う夕莉と朱李の姿からは、明確な未来は見えなくとも強い意志で明日へと進もうとする、バンド初期から続くひたむきな輝きを今も放っていた。

 「今の私たちの姿を全国の皆さんに観てもらって、これからの未来につなげていきたいと思って」と、「拍動の未来」というツアー名について説明した夕莉。自己紹介では、アニメで自分が演じる桃香が“お酒を飲んでいる時以外”はみんなのまとめ役であることに絡め、「リアルトゲトゲでは、お酒を飲んでいる時以外はお姉さんキャラでやらせていただいております」。ボーカルの理名は、ツアーを回りながら「いつか全都道府県を制覇したい」とみんなで話していたことを明かし、「いやいや、全市町村も回りたいです!」と、さらに大きな夢を発表した。また、ツアーを通してプロ野球トークを展開して来たベースの朱李は、埼玉西武ライオンズのユニフォームを羽織り「まず横浜は……、福岡では……」とこれまでのトークを集大成し、自分の地元球団の話が出るたび大いに沸いた会場。「そろそろいいですか?」と理名と夕莉に強制終了されるも、「最近の西武の試合に“鳩”が乱入して」と話を続け、「あの鳩が?」「アイツが?」と2人が突っ込んでひと笑いを巻き起こす場面もあった。

 「落ち着いた曲は、トゲトゲには珍しいから噛みしめるように!」と言って、しっとりと歌い始めた「吹き消した灯火」は、ギターは控えめで、ピアノをメインにしたサウンドが特徴的。過去や挫折した夢と決別し、不安に揺れ動く気持ちが、切実な歌声で表現された。そのムードを引き連れながら、アツくトリッキーな演奏でも聴かせた「黎明を穿つ」は、理名が1本2本と立てる指の本数に合わせてキメの演奏が繰り出され、最後に何かがブツッと途切れるように終わると会場が歓声で沸いた。

 前半の最後には「映画観てくれましたか?(最高!と会場)分かる。同じ気持ち」と理名。「新規カットがあったり『運命の華』がフルになっていて」など、劇場版の魅力を紹介し、『劇場版総集編 ガールズバンドクライ【前編】青春狂走曲』の楽曲を披露した。まずは夕莉のギターカッティングで始まり、理名のロングトーンも印象的なエンディング主題歌「命をくれよ」。爽やかでキラキラとした青春感を宿した、これまでのトゲトゲとは一線を画した雰囲気に会場が沸く。またオープニング主題歌「もう何もいらない未来」では、アニメのシーンをビジョンに映しながら演奏。疾走感あふれるサウンドに、会場からは〈ハイ!ハイ!〉と掛け声がかかった。

 「インターミッション」と題した休憩タイムでは、ツアーに密着したドキュメント映像が映し出された。和気あいあいとしたやりとりやリハーサル風景、そして各地の美味しいものを食べまくる様子など、ライブでは観ることのない3人の素の表情がファンを和ませ楽しませた。

 アニメのラストで「運命の華」を歌った時の衣装が再現された、新衣装で登場した後半戦は、理名の早口でまくしたてるアカペラボーカルで始まる「名もなき何もかも」でスタート。続く「視界の隅 朽ちる音」では、アニメでメンバーが着るTシャツの文字をモチーフにした、「不登校」「脱退」「嘘つき」「ツンデレ」「酒豪」などの言葉がビジョンに映し出されるアニメと連動した演出がお馴染み。理名は客席に手を振り手拍子を促し、リズムに乗ってぴょんぴょん飛び跳ねながら歌ってアニメのシーンを彷彿とさせた。

 また「空白とカタルシス」はベースソロで始まるのが恒例で、朱李のテクニカルなプレイに会場が沸くなか、「東京!」と叫んで楽曲がスタート。夕莉のタッピングプレイのソロでも会場を沸かせた。さらに「爆ぜて咲く」では、アッパーのビートに乗せて、サビの歌詞〈爆ぜて咲いた〉を会場の全員で大合唱。3人で息を合わせて青春ジャンプを決めたほか、曲中にトークを挟んでインターミッションの伏線を回収。
理名「夕莉ちゃん、結局食べ物の話ばっかりだったね」
夕莉「ハッ!」
朱李「でもさ、3人ともよく食べて、ちょっと太ったんじゃない?」
3人「ハッ!」。
まるでコントのような流れで、観客をさらに楽しませた。

 「無知のち私」では、コール&レスポンスで理名が沸かせた。繰り返しのフレーズを全員で叫ぶと、「そんなもんですか? もっと声出せますよね?」と煽り、会場が割れんばかりの声が響くも、「まだまだ」「もっといける」と観客をさらに追い込む。「みんなでっかい声をありがとう。でもXで“難しくて歌えないよ”という声を聞いて、修行が足りないなと思った(笑)」と、“Sっ気煽り”が止まらない。

 後半戦では『劇場版総集編 ガールズバンドクライ 【後編】 なぁ、未来。』の楽曲も披露され、スペシャルなライブとなった。キラキラとしながらどこか不穏さも携えたイントロのギターも印象的なオープニング主題歌「arrow」は、ブレイクの意外性あふれる展開から広がるサビが実に爽快。またタイトルとは裏腹にポップで青春感あふれるサビが秀逸なエンディング主題歌「荊の薔薇」では、観客がクラップを響かせ、サビではその手を前後に揺らして、胸を熱くさせるこの楽曲の世界観を楽しんだ。

 「今日はありがとうございました。ラストスパートいくよ!」。理名がギターを演奏しながら歌うことでも人気の「渇く、憂う」は、クールでありながらメランコリックさもはらんだサビや、空間の広がりを感じさせるコーラスも印象的。また〈うるさいんだよ〉〈ほっといてくれよ〉と、観客がコーラスを掛け合う「声なき魚」では、朱李と夕莉が1本のマイクに向かって頬を寄せてコーラスを歌う場面も。そして、アニメのラストシーンを飾った「運命の華」で本編を締めくくる。「ラスト!」の掛け声で軽快なビートが打ち鳴らされ、続けて観客もクラップ。まるでメロコアのように爽快さあふれるサビを歌い、〈one,two,three,four〉とカウントを全員で合唱すると、会場には紙吹雪が舞い散った。締めくくりは、理名のパワフルなロングトーン。そしてメンバーが向かい合って、息を合わせて音を鳴らした。

 アンコールでは、「誰にもなれない私だから」と「最期の祷り」(※)の2曲を演奏。「誰にもなれない私だから」は、TVアニメのエンディング主題歌として、「雑踏、僕らの街」とともに人気。夕莉のブルージーなフレージングによるイントロや、ギターを愛おしそうに抱きかかえながら歌う理名の切なげな様子も印象的。そんな2人を安定感あふれる演奏で支える朱李。観客は見守るように見つめ、大きな拍手を3人に送った。

 「“ENCORE”のアンコールをありがとうございます。初めての全国ツアーが、ついに今日ここで完結します! またツアーで、みんなのところに行きたいです」と理名。「最期の祷り」ではイントロとともに会場には掛け声がかかり、理名の歌に合わせてクラップが響いた。ネガティブな印象の言葉が並ぶ歌詞とは裏腹に、明るくて前向きな温度感を持った同曲。アニメのキャラクターという枠を越えて、聴く者すべての祈りや願いを肯定してくれるような力強さには、きっと集まった多くのファンが背中を押されたことだろう。

 日本武道館公演を成功させるなど、今やライブバンドとして確固たる地位を築いたトゲナシトゲアリ。最近ではアニメではなくフェスやイベントでファンになり、ライブに足を運ぶようになったファンも多いという。そんな彼女たちはこの日、ライブバンドとしての証である全国ツアーを初完走し、さらに追加公演も無事成功させた。その表情は達成感に満ちあふれ、ライブバンドとしての確固たる自信がみなぎっていた。

Text by 榑林史章
Photo by 冨田味我

◎セットリスト
【トゲナシトゲアリ TOUR 2026 FINAL “拍動の未来 -ENCORE-”】
2026年5月1日(金)東京・東京ガーデンシアター
01. 雑踏、僕らの街
02. ダレモ
03. 蜃気楼ニ問フ
04. 闇に溶けてく
05. 空の箱
06. 理想的パラドクスとは
07. 吹き消した灯火
08. 黎明を穿つ
09. 薄采ディスプレイ
10. 命をくれよ
11. もう何もいらない未来
12. 名もなき何もかも
13. 視界の隅 朽ちる音
14. 空白とカタルシス
15. 爆ぜて咲く
16. 極私的極彩色アンサー
17. 無知のち私
18. arrow
19. 荊の薔薇
20. 渇く、憂う
21. 声なき魚
22. 運命の華
En01. 誰にもなれない私だから
En02. 最期の祷り※

※祷りはしめすへんが正式表記

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